春の魚の貴婦人に例えられる”細魚<さより>”。
見ての通りすらりとしたスタイルの優美な魚で細長い口吻を持ちます。
この長いクチバシは実は下顎で上顎は小さくてとてもおちょぼ口。
海面近くに浮遊している小さな餌を食べるのに適応した結果だと言われています。
瀬戸内海では産卵期の前、2月から4月までが旬とされ、
鮮度の良い地物が豊富に水揚げされます。
特徴のある長いクチバシの下側が、女性の口紅の様に赤いのも特徴のひとつ。
この赤さは鮮度の目安にもなり、鮮やかな物を選ぶのがコツです。
鮮度の良いものは刺身にする時にも銀色が残り見た目も鮮やかです。
お刺身や天ぷら、椀物などで非常に美味ですが、干し物の材料としても高級品。
一夜干しはご飯の友として白眉の美味しさです。
お刺身もそのままでも美味しいですが、たて塩や昆布〆にしても絶品です。
高蛋白で低脂肪な上、亜鉛やナイアシン(ビタミンB3)を多く含みます。
見た目に気品があり、口紅の様な赤い紋様を持つ事から
よく美しい女性に例えられるこの魚、実はちょっと秘密があります。
それは実は”お腹の中が真っ黒”なのです。
これは水面に浮かんだ藻を食べた時に透き通った体が災いして
お腹の中で光合成をされてしまい、お腹の中に酸素の泡ができて
引っ繰り返ってしまう事をふせぐための適応なのですが
世の男達は
”美しい女性は腹黒い。まるで<さより>のようだ”
ということわざを作ったとか。
この場合、被害者は世の女性なのかさよりなのか・・・。